Tさんのお宅は岡山県の市街地にあり、ビルの合間にふと現れる大小さまざまな雑木の庭が目印になっています。ちょうど取材に伺った頃は徐々に新芽がふき出す時期で、雨が降った後ということもあり、庭全体が瑞々しい雰囲気いっぱい。山桜、ジューンベリー、モミジ、ヒトツバタゴ…まるで自然そのものを移して来たように多種多様な木々が立ち並んでいました。
FEATUREひと手間と、その先。
ANTIQUE
アンティークと雑木の庭を楽しむ。
アクシスではインテリア商品の販売や実店舗運営のほかに、海外からアンティーク家具の輸入も行っています。何人もの手を渡りながら時間を経て来たアンティークは、キズや染みさえも味になるおおらかな存在感が魅力。しかし、新品家具と違ってひとつひとつに個性があるアンティークは、部屋に合わせるのが難しいイメージもあります。今回は、アクシスの実店舗AXCIS CLASSICにてアンティーク家具をご購入いただい...
2020.02.03 by AXCISONLINE
明るい雑木の庭を抜けドアを開けると、外とは対照的な深く濃い色の壁が迎えてくれます。しん、と音がするような室内を見回すと、さっそくいくつかのアンティーク家具を見つけました。
「はなれ」の部屋づくり
「このテーブルと、チェアと、ベッドもアンティークね」「ランプはアンティークのようだけど新しいものなのよ」「チェアに座ってここにランプがあったら良いなと思ったの」Tさんはひとつひとつの家具についてはつらつと紹介されながら、この部屋やアンティークについてのお話をしてくださいました。
コーヒーテーブルとして使っているのは、イギリスのG-PLAN社製のネストテーブル。G-PLANは1952年にイギリスの家具メーカーE-Gomme社が作った家具ブランドで、重厚だったイギリス家具に北欧の自由なデザインを取り入れ、1960年代に世界的ブームを起こしました。ネストテーブルは大小のテーブルを入れ子状に収納できるので、使う場面により広げたり重ねたりと使い分ける事ができます。
同じくイギリスのメーカー・ercol社製のチェアメーカーズという肘掛け付きのチェアに深く座り、コーヒーをネストテーブルに置き、大きな背もたれに体を預けます。「このチェアに座ってね、窓から庭を眺めて休憩するの」
元々この部屋は、遠くで暮らされているお子さんが帰って来た時に使う「はなれ」として作られたそうです。小さい民家だった元の家をリノベーションして、ご自身で改装作業を行った部分もあるのだとか。Tさん夫妻が日常をすごされるお宅はすぐ隣にあり、こちらのはなれは来客があったときや庭仕事の合間にくつろぐために使っていると仰っていました。
濃色の壁はTさんたっての希望で選ばれたもの。かつて立ち寄られた山の中の珈琲店が同じように真っ黒な壁の内装をしていて、外は明るい緑に溢れているのに店内は目をふさがれたように暗い、という対比に心を動かされたそうです。「あの壁がすごく良くて。自分達で何度も何度も色を考えて、この色の漆喰を塗ってもらったの」
偶然の出会いでやってくるアンティーク
お部屋のほとんどの家具がアンティーク、というTさん。なぜ新しいものではなくアンティークを選ばれたのですか?という問いには「狙って集めたわけではなくて、偶然ね」と答えられました。
どの家具も何とはなしに立ち寄ったお店で見付けたものがほとんどだったそうで、確かによく見るとどの家具も微妙に色味や状態が違ってることに気付きます。
部屋の奥でひときわ存在感を放っているこのベッドも、偶然の出会いでやって来たもののひとつ。イギリスのercol社のベッドですが、現行の家具では見られないような技巧的なデザインをしています。
ercol社は1920年代にイギリスで設立された家具メーカーで、曲げ木の技術を駆使し、このベッドのフレームのように滑らかな曲線の家具を製造していました。G-PLAN社の家具と比べると柔らかさ、すらりとしたフォルムが目立ち、どこか女性的なイメージです。
「このベッド、倉庫で何年も置いてあったものを何年ぶりかに修理して、お店に並べたらすぐに私達が見付けたんだって」
弧を描くように立体的なべッドフレームは枕を受け止めるようしっかりと高さがあり、足側のフレームも低めの立ち上がりですがブランケットが落ちない高さをキープしています。絶妙な角度でマットレス部分に回り込むフレームを眺めていると、かつてこのベッドを作ったercol社の「美しいものを作る」意思まで感じ取れるようです。
落ち着いた雰囲気の部屋で、ところどころにアクシスの商品も発見。
明るい色の壁や床が主流の住宅インテリアですが、ほの暗い室内ではガラスのシェードや花器が光を反射するさまが印象的です。
そもそものはじまりは庭から
アンティークを素敵に使われている、という事で取材に伺ったアクシスオンラインのメンバーですが、室内から見える庭にも興味津々。訊ねてみれば、はなれの部屋より前に庭づくりをされていたというのです。
「それもたまたま遊びに行ったカフェで、植物を並べていた庭師さんと話をしてたら意気投合して。まだこのはなれも作っていない時に庭づくりをはじめたの」
庭師さんにお任せした庭づくりは、多種多様な植物を数ミリ単位で配置する緻密な仕事で、自然を再現したような庭には野鳥がやって来ることもあるそうです。
古い線路の枕木やベンチも置かれた、林のようなこの庭。夏にはモサモサと森のようになってしまうので木々の間を歩き回って枝の手入れをしたり、虫を見付けたら一匹ずつ取ったりとお手入れも大忙し。家の中にいるよりも庭にいる時間の方が長いかも、と笑って仰います。
取材も終わりに近付いて来た頃、庭の小道に立派な猫が!慣れた様子で堂々と私達の前にやって来ました。桃太郎くんと呼ばれているこのキジ白模様の猫は、いつの間にかこの家と庭に住み着いた雄猫。庭にやって来る野鳥を狙って小道を駆け回ったり、近所の猫と喧嘩をしたりとずいぶん腕白なのだとか。
これまでさまざまな動物と暮らして来たと言うTさん。最初に桃太郎くんがこの庭にやって来た時も、追い出す訳ではなく、家に完全に入れてしまう訳でもなく、徐々に徐々にお互い距離を縮めてゆきました。
「来るもの拒まず去る者追わずでね。好きにさせてるの」
アンティーク家具の素敵な使い方について伺うはずが、庭や部屋づくり、猫と暮らす楽しさについてまで話が弾んだTさん宅への訪問。完璧に見えていたはなれの部屋が、偶然によって選ばれたもので構成されていたとは思いもよりませんでした。アンティークの家具でも気負わず軽やかに選ばれるTさんとお話をしていると、アンティーク家具は難しい、という固定概念がくずれて「私もお気に入りのアンティークに出会ったら成り行きで手にしてみようかな」なんて気持ちになって来たり。
AXCIS ONLINE、実店舗AXCIS CLASSICでは、今回ご紹介したようなG-PLAN社やercol社などのアンティーク家具はもちろん、店舗什器として使用できるようなパーツや世界のフォークアートも販売しています。アンティークに興味がある方はぜひ、オンラインや実店舗にてアンティークのアイテムをチェックしてみてはいかがでしょうか。もしかすると「偶然の出会い」があるかもしれません。
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