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FEATUREひと手間と、その先。

店舗空間のつくりかた。 part.1 タルトデザイン様にお話を聞く

SPACE DESIGN

店舗空間のつくりかた。 part.1 タルトデザイン様にお話を聞く

パン屋さん、本屋さん、雑貨屋さんに、喫茶店…。皆さまが住む町にも、きっとたくさんの素敵なお店があるのではないでしょうか。新しいFEATUREシリーズ「店舗空間のつくりかた」では、そんな魅力溢れる店舗の内装やインテリアについてご紹介したいと思います。初回となる今回は、岡山を中心に店舗や住宅のデザイン・リノベーション・不動産仲介などを行うtaart designの三宅洋平さんを取材させて頂きまし...

2022.07.15 by AXCISONLINE

そのお店があるからこそ。

ひとつのお店の存在が、暮らしを変える事があります。たとえば近所に美味しい焼き菓子屋さんが出来れば、そのお菓子を手土産に誰かの所へ遊びに行きたくなる。もしくは素敵なお花屋さんが出来たなら、殺風景だった部屋が色とりどりの花で飾られる。良いお店がそこにあるだけで、生活に思いがけない素敵なアクセントが生まれます。

左側・アクシスオリジナル照明、右側・アンティーク照明(撮影場所:Muff muffin)

お店を構成するものたち。

ショーケースに並ぶたくさんの美味しいもの。でも私たちの視線は、ショーケースだけでなく、お店に飾られた植物やランプ、アンティークの雑貨たちへも移ってゆきます。ネットショップやSNSと違う圧倒的にリアルな実店舗という空間。働く人の声や表情、商品、空間全体から感じるムードが一体となって、そのお店のメッセージを伝えます。

(撮影場所:Muff muffin)

空間と商品、引き立て合う存在として。

店舗において空間と商品とは、互いを引き立て合う関係です。「見せる」「見られる」ことを意識した空間作りには、住宅のインテリアとはまた違った抑えるべきポイントが存在しています。「店舗空間のつくりかた」シリーズでは、様々な業態の店舗やお店作りに関わる方にお話を伺い、商業空間での照明やパーツの使い方例などを詳しくご紹介させて頂きます。

タルト不動産 / taart designさまを訪ねました。

今回お話を聞かせて頂くタルト不動産 / taart design(タルトデザイン)の三宅洋平さんは、岡山県を中心に住宅や店舗の空間デザイン・リノベーション・不動産仲介などを行われています。サービス全体を通した特徴は、シンプルながらヒネりが利いたデザインや、作り込みすぎない空気感を持つ空間作り。これまで手掛けてきた店舗ジャンルは、飲食店、美容室、お花屋さん、セレクトショップなど多岐に渡ります。

『タルト不動産』と『taart design』。この2つの名前を掲げて三宅さんは活動されています。

『タルト不動産』は物件情報やリノベーションについてのコラム記事などが掲載されたメディア型公式ホームページの名称で、そのサイト運営を行なっているのが『taart design』。不動産とデザイン、そのどちらの領域もカバーされているのが三宅さんの業態となります。

不動産と空間デザインは、近しいジャンルではありますが、カバーする範囲は全く異なります。たとえば店舗作りの場合で言うと、理想とする立地にある貸店舗や売買物件・土地を見つけて契約するのが不動産の範囲。その物件の外観・内装・ロゴマークやサイン計画といった部分を請け負うのがデザインの範囲となります。

店舗にとって「立地」はお客さんを集めるために重要な要素なので、不動産領域でピッタリの物件を見つける必要があります。そして、その店ならではの「居心地」を作るのはデザインの役目。どちらも大事だからこそ、タルト不動産/taart designでは不動産とデザインをワンストップで対応できる体制で運営されています。

三宅さん、店舗作りについてお話を聞かせてください!

三宅さんは岡山県倉敷市出身。2015年に岡山県総社市にtaart designの事務所を構えてから、さまざまな住宅や店舗に関するお仕事をされて来ました。これまでの経歴や、デザインされた店舗についてのエピソードをお伺いいたします。

─ 三宅さんのこれまでの経歴をお伺いさせて頂きます。建築や空間デザインについては、大学などで専門的に学ばれていたのでしょうか?

「実は学校ではまったくそういう勉強はしていなくて、空間デザインについては就職して働きながら学んで来たんです。大学入学時には将来何をしようか分からないまま経済学部に進んで。とにかく在学中に興味があるアルバイトをして、やりたい職業を見付けようと思ってました。」

─ そうだったのですね。どんなアルバイトをされていたのですか?

「飲食店とか色々と…もともとカフェとかお店という場所が好きだったんです。あるとき雑貨店でバイトをしていて、自分は店を運営するより店のハコである建物のほうに興味があるなと気付いたので、建築や不動産を仕事にしようと決めたんです。」

─ 興味深いです。それで就職時に建築会社に入られたのですね。

「はい。最初は建築会社に入社して6年ほど在籍しました。建築業界の全体図を知って、東京転勤なども経て、設計デザイン事務所に転職。そこで本格的に空間デザインやディレクションを担当して6年ほど在籍してから、岡山に戻って開業しました。」

─タルトさまのデザインは独特のスタイルをお持ちだな、と感じるのですが、何かルーツというかバックボーンとなる物があるのですか?

「いやー、本当に色々好きなんです。僕達の若い頃ってイームズとか、ミッドセンチュリーとかが流行って。それが好きになったら、じゃあ同じ時代に他にどんなデザイナーがいたの?とか、その頃日本ではどんな建築家やデザイナーがいたんだろう?とか、音楽は?本は?とか枝葉のようにどんどんと脱線して興味が広がって行くタイプでした。」

─なるほど。

「ひとつルーツがあるとすれば『東京R不動産』(※R不動産株式会社が運営する不動産サイト)かもしれません。雑誌でたまたま目にしたR不動産の記事で、真っ白なペンキを塗ってリノベーションしただけの古いビルでDJイベントをやっている写真を見たんですけど、衝撃を受けました。今でこそリノベーションって多少は市民権を得てきましたけど、当時は無かったんですよ。不動産という誰が扱っても同じものであっても、どう見せるか?というだけで、こんなに違うんだなと。仕事で色々な住宅を担当して、東京に行って有名な建築家やデザイナーの仕事も見て回って、それらが何となく集まって煮崩した様なのが自分のスタイルかなと思っています。」

─最初から今のような不動産紹介サイトをやろうと決めていらっしゃったのですか?

「最初は会社員時代と同じように、新築住宅を土地から建築までワンストップでやろうと思ってました。ただ、岡山で何の実績も無いのに依頼をもらうのは難しいよなとも思っていて。そこでまずは不動産のセレクトショップから始めよう!と思い付いたのがきっかけです。」

─そうだったんですね。

「学生時代に宅建を取得してはいたのですが、不動産業自体の経験はあまり無く…。不動産協会の方や不動産屋さんには、手取り足取り本当にお世話になりました…(苦笑)。岡山に帰ってきて、サイトの準備をして、フライヤーを作って、街中をグルグル回りながら色んな人に『タルト不動産』の構想を紹介して回って、そうこうやっているうちにフライヤーを配っていたカフェや服屋さんのスタッフの方から『面白そうですね』って声を頂く事が増えてゆきました。三ヶ月ぐらい経った時に初めてお客さんから賃貸仲介の依頼をもらって、すごく嬉しかったです。」

─店舗や住宅のデザインはどのタイミングで始められたのでしょうか?

「最初に店舗デザインを担当したのは、倉敷美観地区のシャツ専門店INOBEさまです。クライアントとは住宅の賃貸仲介をきっかけに知り合い、お話をしているうちに店舗のご相談も頂きました。当時すでに賃貸住宅のリフォームの仕事も受け始めていたので、出来るんじゃないかなと考えて。INOBEさまの現場で写真を撮ってサイトにレポート記事をアップしたら、徐々に店舗デザインのお問い合わせも増えてきて今に至ります。」

そのお店ならではの魅力を、一緒に作り出す

三宅さまの店舗デザインは、クライアント=依頼主の方への丁寧なヒアリングから始まるそうです。クライアントの多くは『自分らしいお店を作りたい』という気持ちは強く持ちながらも、空間設計や運営についての専門知識が深くない状態で店舗施工会社を訪ねます。クライアント様と三宅さんはコミュニケーションを重ねながら、外観・内装・サイン・ブランディング的な計画まで決定されてゆくそうです。

「どんな商品/サービスを提供するのか?いつまでに開店したいのか?予算はどれぐらいなのか?といった基本的な事や、お店を目立たせたいのか目立たせたくないのか?という事もヒアリングしています。万人に開かれたタイプのお店と、隠れ家的なお店では、立地選びからして全く異なるんです。依頼主の方がいま認識できている店舗像を、さらに超えてより良いお店が完成するよう、一緒に伴走しながら設計を進めています。」

店舗施工のスケジュール感

店舗施工のスケジュールは、住宅よりも短い傾向にあります。三宅さんがこれまで担当された店舗では、依頼から完成まで早ければ3ヶ月、ほとんどは半年程度というケースが多かったそうです。

【スケジュール例】
設計/2ヶ月
見積もり/1ヶ月半
工事/1ヶ月~数ヶ月程度

一人一人のクライアントと真剣に店作りを行うため、設計には時間を掛けているそうです。相見積もりは受けず、依頼から引き渡しまで三宅さんが窓口となって進められます。

「うちは営業や設計専任のスタッフは雇用していません。依頼・設計・工事・完成後のアフターケアなど基本的に僕が窓口になり、プロジェクトごとに協力会社様と一緒に作り上げてゆきます。スケジュールや予算などについても明確にお伝えして、お互いに納得の上で依頼をお受けしています。」

Copyright © taart design / Kato Shinpei

セレクトショップmaqooさまの場合。

タルトさまがデザインされたお店の中から、いくつか特徴的なケースをご紹介して頂きました。アパレルセレクトショップmaqooさまは2021年に岡山市北区にオープンした店舗で、国内メーカーを中心にシンプル・ナチュラルテイストのウェアと小物を取り扱われています。市中心部エリアのビルの2階、変形間取りのお店の中は清々しく光の入る気持ちのいい空間です。

Copyright © taart design / Kato Shinpei Photo

白い空間に木とアイアンの素材感を足して

─透明感のある、素敵なお店ですね!

「窓が多くて、元々何もしなくても明るい雰囲気のハコなんです。アパレル店舗という事でシンプルに壁や天井は白く。少しあたたかみがある雰囲気も欲しくて、木や鉄やグリーンの什器で素材感を足しています。形が特徴的なアイアンのハンガーラックは、このお店に合わせて、お付き合いのある職人さんと一緒に作りました。シンプルな白い空間だけど、あまり緊張感がでないように意識しています。」

ペンダント灯具に電球だけを付けて、窓辺に。

アクシスのペンダント灯具と、真鍮ペンダント。窓辺に4個と、カウンター上に1個が吊るされているのを発見しました。店内の窓辺と壁面に沿って白いダクトレールが設置してあり、スポットライトやペンダントライトが使用されています。シンプルな店内で、真鍮の素材が少しの飾り気を添えていました。

アクシスオリジナル ペンダント灯具 E17用 60cm(Copyright © taart design / Kato Shinpei)

店舗の照明=商品をライトアップする役目がある

─照明についてお尋ねします。このペンダントライトやスポットライトですが、なぜこのアイテムを選ばれたのでしょうか?

「ペンダントライトは実際に店舗(AXCIS CLASSIC)に行って実物を見て、コレが似合うなと思って選びました。過度な装飾はないけど、置いたら良い感じに馴染むだろうと。スポットライトに関しては、商品を狙ってライトアップしてあげる必要があるのでこれにしています。本当はダウンライトの方が見た目はスッキリするんですけど、ダウンライトって下向きに照らすアイテムなので、商品の場所が移動するとライトアップから外れてしまうんです。スポットライトなら商品の場所を動かしても照射角度を変えられますし、売り場変更がある店舗には向いています。」

Copyright © taart design / Kato Shinpei

hana shoes&co.の例

「こちらの写真はhana shoes&co.というシューズショップです。実はhanaさまは、先ほどご紹介したmaqooさまの姉妹店なんです。2021年初頭にhanaさまの店舗リノベーションを担当しまして、その後2店舗目としてmaqooさまを出店される際に再びご依頼を頂きました。hanaさまは国内外の靴を取り扱うセレクトショップで、商品の魅力を引き立てるためにシンプルな内装と動線の良い店内にリニューアルしました。」

Copyright © taart design / Kato Shinpei

商品が映える内装にする。

「リノベーションのメインプランは、壁一面を白にして商品である靴を引き立てる事。他にも窓や入り口のサイズ変更をして入店しやすい雰囲気にしたり、バックヤード空間を作り直して在庫収納スペースを増やしたり、ロゴマークをデザイナーの方に依頼して刷新したりとイメージチェンジを行いました。リニューアル前と同じ商品を扱っていても、見え方が大きく変化したと思っています。」

Copyright © taart design / Kato Shinpei

敷居が高く感じる世界だからこそ。

住宅や店舗作りの中で、一番多いトラブルは「こんなはずじゃなかったのに」という施工後のミス発覚だそうです。これはクライアントと設計・施工者の双方のコミュニケーション不足や行き違いが原因で起こるので、タルトさまでは出来るだけ多くクライアント様と工事現場に足を運ぶそうです。工事の様子を一緒に見ていると違和感やミスにも事前に気付く事ができ、ちょっとした変更や修正希望もその場にいればすぐに伝える事ができます。

設計=よくわからない、工事現場=男性が多く怖いといったイメージを持たれがちな業界だからこそ、なるべく工程を透明化し納得感を持って完成まで進みたいと三宅さんは仰っていました。

「僕たち作る側の人間にとって、店舗の完成はひとつの仕事の終わりです。けど、そのお店にとっては完成した瞬間が始まりなんですよね。担当させていただいたお店が軌道に乗っているからこそまた新しい依頼が来るのだと思うと、適当な事はできないと思って、身が引き締まる思いでいます。」

文鳥(おもち)

サイトとSNSを要チェック

今回ご紹介した店舗施工レポートは、自社メディアである『タルト不動産』に詳しくご紹介されています。さらに、SNSでは物件情報のみならず本や野鳥(!)についても同じボリュームで投稿されるというユニークで自然体なスタイル。他にも沢山の面白い取り組みをされているので、是非チェックしてみて下さいね!

タルト不動産公式ホームページ

Instagramアカウント

Facebookページ

魅力あるお店作りのエピソードをご紹介する「店舗空間のつくりかた」。初回はタルト不動産 / taart designの三宅さんにお話を伺いました。店舗施工のスケジュール、アイテム選びの方法など、参考になった部分はありましたでしょうか。ぜひ皆様のお店やお家の空間作りに役立てていただけますと幸いです。

■ タルト不動産 / taart design
タルト不動産は、ライフスタイルの視点から物件をセレクトし、紹介するWEBメディアです。
中古戸建、中古マンションの購入から、リフォーム・リノベーションのデザイン・工事、店舗の内装工事など、
不動産から建築までワンストップでのご提案も可能です。

どうすれば理想とするライフスタイルを実現できるのか、
ヒアリングと対話を重視し、イメージを共有しながら進めていきます。
まずは、あなたの話を聞かせてください。

https://taart-design.com/

〒719-1131
岡山県総社市中央2-23-21
(JR総社駅より徒歩6分)
TEL&FAX:0866-95-2833
営業時間:OPEN 9:30 / CLOSE 18:30 [水曜定休]


【 Specia Thanks 】
- taart design 設計/施工店舗 -
・Muff muffin
Instagramアカウント @muff___muffin_shop

・maqoo
公式Online Shop
Instagramアカウント @_maqoo__

・hana shoes&co.
公式Online Shop
Instagramアカウント @shoes_hana

【 写真提供 】
・Kato Shinpei Photo
https://katoshinpei.net/studio/

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